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ラジオをつけない日
              トーマ・ヒロコ

 

蝉の声で目を覚ます
蛇口をひねって洗顔
トイレの扉を閉める
近所の子どもが泣きわめく
麦茶が喉を潤す
新聞をめくる
野菜を刻む
うなる換気扇
肉を炒める
皿がぶつかり合う
壊れかけの魔法瓶
バイクで来る郵便配達
空の郵便受けに舌打ち
離れた友へ言葉を刻む
つっかけを履いて表に出る
ポストの口は「毎度あり」
近所の子どもがはしゃいで遊ぶ
風に押され舞うカーテン
架空の恋愛を目でなぞってはため息
雪崩を起こした本の塔
裸足で床を歩く歩く
バイクで来る新聞配達
氷は麦茶へダイビング
せんべいを頬張る
子どもの帰宅を促す台詞と七つの子
シャワーの水は排水溝へ
こぼれ出る鼻歌
気が付きゃ大熱唱
日記帳を走る鉛筆
風にそよぐ草たち
暴走族
時間の進む音。

 

静かなようで
静かじゃない
ラジオをつけなかった一日

 

 

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