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七月三十一日の手紙~静かな空の下で~
                      トーマ・ヒロコ

 

ヘリの飛ばない静かな街から手紙を送ろう

生まれ育った島を出てもう四ヵ月

この街からふるさとを見てみたいと思ったのだ

しかしこの街からふるさとは遠くてあまり見えない

島からこの街を見ていた時は

そう遠く思えなかったのに

 

まわりの人々は

私に島の食べ物について聞いてくる

特別な店に行かなくても

島の食べ物が私たちを出迎えてくれる

ゴーヤー、黒糖、シークヮーサー、スッパイマン

島の食べ物はみんなに愛されている

 

しかしこの街で知られているのは

島の食べ物のことだけなのではないかと思うのだ

この街の人々にも知っていてほしいこと

この街の人々と一緒に考えたいこと

島の空や海や花や食べ物のように

明るい色をしていないことが

この街にうまく届いていないように思えるのだ

 

祖父は三線が得意だったと聞く

私は三線の音の入った騒々しい歌を聴きながら電車に揺られ

毎日家と会社を行き来している

そしてヘリの飛ばない静かな空を見上げて思う

私のふるさともこの街のようになればいいのに、と

 

 

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