top of page

一ヶ月
                    トーマ・ヒロコ

 

お世話になりました
緑の電車に一礼する
元気でな、また来いよ
羽田発沖縄行
降り立った蘭の咲き乱れる空港
優しく見えないのは気のせいだろうか
窓辺から見た青空が

 

スタンドではなく、給油所
教習所ではなく、自練
正座ではなく、ひざまずき
かっこいいではなく素敵でもなく、上等!

 

翻訳せずにすむ気楽さ
訛りたいように訛ることのできる自由さ
自分と同じ苗字がそこらじゅうにある心強さ

 

だけど気付けば一人ため息をついている

 

電車で鎌倉小旅行もいいけれど
海が呼んでいる やんばるドライブ

 

「ハイサイ、みなさん、チャーガンジュー?」
ラジオからはごきげんDJの声

 

フーチバーそばを食べた帰り道
ソーキそばを食べたくなる

 

それでも気付けば一人ひざを抱えている

 

緑の電車に揺られた仲間たちは
私が毎日楽しく乾杯していると思っているだろう

 

だから手紙が書けない
メールが打てない

 

「毎日てぃーだ雨(あみ)が降っています」
特筆すべきことはこれくらい
いやいやこれでは通じない
「毎日スコールが降っています」
まだ私は翻訳しているのだと苦笑する

 

車をとばし今日はKiroroを唄う
「帰る場所」はここのはずだが
誰が「お帰り」と言えば
心から「ただいま」と言えるのだろう

 

わナンバーが私の車を追い越していく

 

 

bottom of page