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ファミレスにて

            

                                    トーマ・ヒロコ

 

たまにはそば屋ののれんをくぐらずに
赤れんがの建物へ

 

注文を取りに来た女の子は
金城とか比嘉という名前なのに
訛りの欠片もない日本語を話す

 

運ばれてきた親子丼を見て私たちは言う
「量が少ないね」
「仕方ないよ、全国チェーンだのに」
 
「この漬け物塩辛いね」
「仕方ないよ、全国チェーンだのに」
 
きっと観光客もどこかでこう言っている
「量が多いね」
「やっぱり違うね、沖縄は」

 

「この卵焼き甘くないね」
「やっぱり違うね、沖縄は」

 

料理を作っている人は
大城とか照屋という名前なのに
ソーキ骨(ぶに)でダシを取ることもない

 

日本中どこでも
同じ言葉
同じ味
そして沖縄でも

 

そば屋ののれんが恋しい

 

家族でファミレスに行って親子丼を食べた日のできごと

 

 

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