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冬の花

                  トーマ・ヒロコ

 

ハローウィンのTSUTAYA

平積みされた『CanCam』の表紙に躍る文字

「クリスマス♥デートスタイル最新版」

もうクリスマス?

何も買わずに店を出て

まだまだ先じゃないかと思いながら

家路の途中にすれ違う

日傘を差したセーラー服の女の子

 

あっという間にクリスマス

ハンドルを握る手にジリリと日が差す

まだイルミネーションの灯らない昼間の町

足早に歩く奥さん

片手にケーキ

片手に日傘を差して

 

年が明ければ年賀状の束に

思いがけない人の名前を見つけ

あわててお返事

ポストへ急ぎ足

おや、あの人も同じようだ

向こうから黒い日傘を差し

年賀状を持った人がやって来る

 

サンエーのムーチー特設コーナー

サンニンの葉 もち粉 ビニール紐

ムーチー作りを助けてくれる

便利な材料たち

品定めをする新米ママ

カートにかかっているのは白い日傘

 

とまりんの前

歩行者信号が青になるのを待つ

「さすが常夏の島、冬も日傘なんて」

声の主は若い観光客カップル

横断歩道の向こうには日傘を差した女の人

私が知っているこの島の冬はこうではなかった

すっかり変わってしまった

いくつかの冬を留守にしていた間に

 

太陽に向かって咲く日傘の花

オゾンホールの向こうに咲く花たちを見て

太陽は何を思うのだろう

取り戻そう

黒や白の花が咲かない冬を

手をこまねいているわけにはいかない

手遅れかもしれなくても

 

レジ袋を断るのに慣れてきた

サンエーカードにマイバッグポイントが貯まる

マックスバリュの買物袋カードのスタンプが増える

身近なエコでいい気分

 

しかしみんながマイバッグを使えば

レジ袋工場の人たちの生活はどうなるだろう

 

そんなことを考えながら横切る

マックスバリュの駐車場

片手にマイバッグ

片手に日傘を差して

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